Nuclear Abolition News and Analysis

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UN Chief’s Disarmament Agenda Faces Rough Waters

難航が予想される国連事務総長の軍縮アジェンダ(ジャヤンタ・ダナパラ元軍縮問題担当国連事務次長)

私たち共通の未来を守る』と題されたアントニオ・グテーレス国連事務総長の新たな軍縮アジェンダが発表されたが、「現在の行為主体(アクター)の下で、私たち共通の未来を守れる可能性は低い」、とジャヤンタ・ダナパラ氏は記している。ダナパラ氏はスリランカの元大使で、元軍縮問題担当国連事務次長である。「私たちは、行為主体の交代を待つか、失敗した交渉の瓦礫の中から新たな出発を模索するしかありません。しかしそれも、予測不能なトランプ大統領と金正恩北朝鮮最高指導者にかかっている。」とダナパラ氏は記している。

【キャンディIDN=ジャヤンタ・ダナパラ】

Photo: UN Secretary-General António Guterres speaks at the University of Geneva, launching his Agenda for Disarmament, on 24 May 2018. UN Photo/Jean-Marc Ferre.大々的に予告されていたアントニオ・グテーレス国連事務総長による軍縮アジェンダは、5月24日、ジュネーブ大学の学生たちの前で披露された。

これはグテーレス国連事務総長の就任2年目に出されたものだが、残念なことに、今日の国際局面は、米軍(とりわけ核戦力)の優越を主張して好戦的な言辞を放つ目立ちたがりのトランプ大統領の愚かな言動によって支配されている。

またこれは、シリアやイエメンなど世界各地で、化学兵器のような禁止されている兵器や人工知能を用いた新兵器技術が使用されて紛争が激しさを増す中で、発表された。つまり、今回の国連事務総長による演説の聴衆が、未来にインパクトを及ぼすであろう若者達であったことの象徴的な意義は明らかだ。

これに先立つ1か月前の4月26日、国連総会は、「核軍縮に関する国連ハイレベル会議」を無期限で延期することを決定した。

グテーレス国連事務総長は演説の中で今日の厳しい状況について正確に解説している。「同時に、戦争の性格自体も変わりました。」

「今日の紛争はより頻繁で長期化し、一般市民への被害も大きくなっています。内戦は地域的、世界的な利害関係と結び付いています。紛争当事者は、場合によっては、暴力的過激派戦闘員やテロリスト、民兵組織、あるいは普通の犯罪者集団であることもあります。しかも、こうしたグループは銃だけでなく、ドローンや弾道ミサイルを含む大量の武器を所持し、常にその増強を図っています。」

「全世界、特に最も危険な地域で、軍事費が増大し、軍備競争が加速しています。」

「昨年の軍事支出は、兵器購入額を含めて1兆7000億ドルを超え、ベルリンの壁崩壊後の最高となりました。この額は、全世界の人道援助に必要な金額の約80倍にも当たります。」

「化学兵器も再び使用されています。国際社会は分裂し、効果的な措置を講じることができていません。」

「戦場での使用を念頭に製造された強力な破壊力を持つ爆弾が、今では一般市民の居住区で使われています。」

「また、既存の法律や条約の枠組みを越えかねない、人工知能や自律型システムを用いた新型兵器も生まれてきています。」

「その一方で、貧困に終止符を打ち、健康と教育を促進し、気候変動に対処し、地球を保護するための取り組みに必要な支出がされていません。」

国連事務総長は、通常の状況下にあっても、核兵器を持った安保理の5常任理事国に囲まれて、平和や軍縮に関する自身のメッセージに注目を集めさせることは容易ではない。

潘基文国連事務総長は5項目からなる軍縮提案を発表したが、安保理常任理事国に無視された。かつて(ローマ法王には大きな影響力があると聞かされた)ヨシフ・スターリンが、「そいつ(=法王)は何師団持っているんだ。」と嘲笑して答えたとされるが、安保理5大国の態度はそれに重なるものがあるのかもしれない。世界の意思決定者を自負している5大国共通の立場は、国連事務総長 (Secretary-General)に「総長(General)」としてよりもむしろ「事務 (Secretary)」屋としてふるまうことを望んでいる、というものだ。

世界の平和と軍縮における国連の役割が比肩されざる正統性を持っていることは、国連の起源と、1946年1月の国連総会決議第1号が核軍縮に関連するものであったという事実にまでさかのぼる。

私たちは、1962年のキューバ危機において、世界規模の恐るべき核戦争が目前に差し迫ってくる冷戦下の状況をくぐり抜けてきた。

今日、9カ国(そのうち5カ国は50年の歴史を持つ核不拡散条約[NPT]の加盟国)が、約1万5000発の核兵器を保有している。それらの核は、意図的な政策、あるいは意識されざる事故によって発射可能な状態にあり、核のホロコーストを引き起こしかねない。

『原子科学者紀要』(本拠シカゴ)の有名な「世界終末時計」の針の設定に科学・安全保障委員会の一員として私もかつて加わったことがある。いまやこの針は、(=人類滅亡を象徴的に示唆する)深夜まで2分に設定され、冷戦以来もっとも深夜に近づいている。

私は、幸いにも、オーストラリア政府が招集した多国間グループである「核兵器の廃絶に関するキャンベラ委員会」(1996年)に加わることができた。

この報告に忘れがたい一節がある。「核兵器は、こうした兵器には独特の安全保障上の利点があると主張し、しかもそれを持つ権利を自分たちだけに限ろうとする、一握りの国家が保有している。このような状態は極めて差別的であり、従って不安定である。長続きはしないであろう。如何なる国家による核兵器の保有も、絶えずその他の国の所有欲を駆り立てる。」

「世界は核拡散と核によるテロの脅威に直面している。こうした脅威は増大している。排除されなければならない。」

「このような様々な理由から、核兵器は全ての国家の安全保障を縮小しているというのが、一つの重要な現実である。事実、核保有国は自分たち自身が核兵器の目標になっているのである。」

平和を象徴する折り鶴が表紙にあしらわれた「軍縮のための国連アジェンダ」は、世界と地域レベルにおける安全保障環境の分析で力強い議論を展開している。

この文書は、軍事支出が拡大する中であらたな軍縮アジェンダをなぜ必要とするのかを辛抱強く提示し、次に、「人類を守るための軍縮」「人命を救うための軍縮」「未来世代のための軍縮」そして、「軍縮のためのパートナーシップの強化」と話を進めている。

特別のテーマや図表、統計を示した囲み記事の裏付けを伴ったこの文書は、正確かつ厳密な議論を展開している。

非同盟諸国からの要請により1978年に招集された第1回国連軍縮特別総会は、軍縮の協議と交渉を行うための特別機関を立ち上げる歴史的な最終文書を採択して、新たな境地を切り開いた。しかし40年を経た今、こうした機関のほとんどは、錆びつき活動を弱めている。今回の新しい軍縮アジェンダが、効果を上げていないこのシステムにどのように適用されるのか、そして、誰がその推進力となるのかは定かではない。

すでに、世界の市民社会の力によって昨年、核兵器禁止条約が採択され、この功績によって核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)はノーベル平和賞を受賞した。核兵器禁止条約は、発効に向けて支持を集めつつあるが、歩みは遅い。

核不拡散条約(NPT)は、儀礼的となった運用検討会議を2020年に開催する。

欧州連合とイランが共同包括行動計画(JCPOA)の締結に成功したが、(イスラエルの)ネタニヤフ首相とサウジアラビアからけしかけられたトランプ大統領によってつぶされようとしている。

実施をめぐって紆余曲折があったシンガポールでの米朝首脳会談によって北朝鮮の核の脅威を平和的に解決する可能性が出てきたことが、唯一の前向きなシグナルである。

国連事務総長の新しい軍縮アジェンダが、現在の行為主体(アクター)の下で、私たち共通の未来を守れる可能性は低い。私たちは、行為主体の交代を待つか、失敗した交渉の瓦礫の中から新たな出発を模索するしかない。

しかしそれも、予測不能なトランプ大統領と金正恩北朝鮮最高指導者にかかっている。(6.07.2018) INPS Japan/ IDN-InDepth News 

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