Nuclear Abolition News and Analysis

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The Promise of the Treaty on Prevention of Nuclear Weapons

|視点|核兵器禁止条約がもたらす希望(ジョセフ・ガーソン平和・軍縮・共通安全保障キャンペーン議長)

Credit: ICAN【ニューヨークIDN=ジョセフ・ガーソン】

核兵器禁止(核禁)条約の批准国が50に達し、90日後の来年1月22日に発効する。広島・長崎の被爆者や核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の活動家、外交官らが、非核兵器世界の実現に向けた長い闘いに条約がもたらした貢献を喜び合った。

次の、最も重要なステップは、「核の傘」の下にある国ひとつ以上の署名と批准を得ることだ。欧州の北大西洋条約機構(NATO)加盟国か、あるいは、「クアッド」と名付けられた、いわばアジア太平洋地域におけるNATOのようなものに属する日本・オーストラリア・インドのうちの一つがこれに当たる(クアッドの4番目の構成国は米国)。

各国政府は、衰えつつある世界の覇権国の気分を害するようなリスクを自発的に取ることはない。過去に見てきたように、政府の政策や公約は、世論や公の議論、大衆の動員によって変わりうるのである。

核禁条約がつくり出す議論の場や仕組み、それが解き放つ政治的な力は、現在のまたとない機会に現れた。『原子力科学者会報』は、「世界終末時計」の針を「真夜中(=地球と人類の滅亡)まで100秒」に近づいているという、これまでになく厳しい警告を発している。これは冷戦開始以来もっとも、「真夜中」に近づいている。

世界の核大国はそれぞれの核戦力を強化している。南シナ海や東シナ海、台湾海峡において、1914年にサラエボで響いた銃声のように、軍が引き起こす事件や事故、見込み違いが、連鎖的に拡大しかねない戦争を引き起こしかねない。同じことがバルト海や黒海に関しても言える。米国によるB-52爆撃機の運用も含め、米ロ間の挑発的な軍事「演習」が、大惨事の引き金を引きかねない。

2017年に国連で条約交渉が行われ、122カ国の賛成を得て採択された事実は、原爆が投下された広島・長崎や、核実験が行われたマーシャル諸島、オーストラリア、ユタ州やセミパラチンスクの風下住民など被爆者たちによる多大な功績だと認識されなければならない。彼らの、感情のこもった、焼け付くような証言、彼らとその家族、コミュ二ティーが受けた被害からくる確固とした主張は、国際的な議論の焦点を、従来の表面的な安全保障問題に終始する不毛で詐欺的な内容から、国際的な議論の焦点を、安全保障上のみせかけの執着と不毛かつごまかしのものから、実際に核保有国が何をしているか、核兵器が人道上にも地球環境にとっても壊滅的な結果をもたらすというものに変えた。

毎年開かれる広島・長崎の世界大会や、オスロやナヤリット、ウィーンで3度に亘って開催された「核兵器の非人道性に関する国際会議」において、被爆者たちは、国連で核兵器禁止条約の協議を開始した外交官も含めて、人々の心を開き、心をつかんだ。

核禁条約は基本的に、批准国に対して、「核兵器やその他の核爆発装置を開発・実験・生産・製造・取得・保有・備蓄すること」を禁じるものである。また、核兵器や核爆発装置を移転したり受領したりすることも禁じられる。つまり、核兵器を自国に配備・展開させることが出来ないということである。さらに、核兵器を管理することや、条約で禁じられた行為に対する支援を与えることもできない。核兵器の被害者を支援し、環境回復を図ることも義務付けられる。そして、重要な意味合いをもちうる条項として、締約国に対し、日本や米国を含めた非締約国へ批准や署名を促すことを求めている第12条がある。

もし締約国に必要な勇気と想像力があるのならば、時間とともに、核禁条約を普遍化するために必要な政治的、外交的、経済的力と道徳的説得力を発揮することができるかもしれない。広島・長崎で聞いた被爆証言に心を突き動かされ、ウィーンで「核兵器の非人道性に関する国際会議」を主催したオーストリアのアレクサンダー・クメント元軍縮大使は最近、これは長いプロセスになるだろうが、熱意をもってやれば達成可能な目標だとの見方を示した。

核兵器禁止条約が必要であったというわけではない。50年前、核不拡散条約第6条において、核保有国は「核軍備競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置につき、誠実に交渉を行うこと」を約束していた。また、国連総会の第一号決議は「平和目的にのみ利用するように原子力を管理」し、「原子兵器と大量破壊に応用可能なその他すべての主要な兵器を国家の軍備から廃絶する」ことを目指すことを定めていた。

NPT発効から40年後、2010年NPT再検討会議の閉会にあたって、核保有国は「覆すことのできない約束」だとして、世界の核兵器を体系的かつ前進的に減らすための13項目の実践的な措置を履行することを再確認した。2020年のこれまでにその中で実際に採られた措置はわずか1つである。

米国を中心とした核保有国は、これらの国際的な法的義務を果たすよりは、人類の生存を可能とする「核兵器なき世界」を生み出すために必要な措置を採ることを頑なに拒んでいる。これらの国々は、大量虐殺を引き起こし地球さえも滅ぼしかねない核戦力を継続的に強化し、核戦争ドクトリンに磨きをかけ、核戦争の開始に向けた準備を進め、あるいは、開戦の脅しをかけている。

(ジャーナリストで学者のフレッド・カパン氏は新著『爆弾』のなかで、世界のほとんど誰も知らない話として、ドナルド・トランプ大統領が(北朝鮮に対して行った)「炎と怒り」の威嚇と核戦争の準備が、いかにして世界を壊滅寸前まで追い詰めたかを記述している。)

核兵器国は、誠実に核軍縮交渉を行う義務を規定したNPT第6条と2010年NPT再検討会議で行った「覆すことのできない約束」の履行を拒むことで、NPTの正当性を完全に

破壊したとまでは言えないにしても、損なってきている。人類の生存を脅かすこうした核兵器国の不作為と、「人類と核兵器は共存できない」という被爆者による緊急の呼びかけが生み出した政治的な熱気、さらに世界の多様な平和運動が一貫した要求に徹したことが、核兵器禁止条約の交渉と署名、批准、そしていまや条約発効へとつながった。

核禁条約はそれ自体で核弾頭を一発たりとも減らすことはないが、核のハルマゲドン(最終戦争)に備えつつある国々を守勢に回らせる効果がある。

米国をはじめとした5つの核兵器国(5大国)は、核禁条約はNPTを危機に晒すという誤った主張をして、当初から核禁条約の交渉と条約自体に反対していた。実際には、クメント大使が繰り返し述べているように、核禁条約はNPTを補完し、強化するものだ。

5大国は条約交渉をボイコットし、外交や記者会見の場で核禁条約への反対表明を行い、核兵器に依存する国々に対して、条約に署名・批准しないよう強い圧力をかけた。50カ国目の批准がなされる前夜にAP通信が報じたように、トランプ政権は、核保有国は核禁条約が「もたらしかねない影響に反対して連帯する」と述べて、条約を批准した諸国に条約から脱退するよう圧力をかけた。

古い諺にもあるように、海の潮を押しとどめようとするのに似て、これは無駄骨というものだろう。トランプ大統領やプーチン大統領、そして彼らの同志(=核保有国の指導者)たちは、すぐには消えそうもない新型コロナウィルス感染症の封じ込めに失敗しているの

と同じように、核禁条約の発効を押しとどめることはできないだろう。

核禁条約の発効は、核兵器のない世界に向けた闘争の新たな段階の始まりとなる。広島・長崎の被爆者と日本の平和運動は、核兵器廃絶の闘いを長らくけん引してきた。彼らのキャンペーンは、核禁条約の実現にとって非常に大きな役割を担ってきた。

上で述べたように、核禁条約にとって最も火急の課題は、「核の傘」に依存する諸国の署名・批准を得ることだろう。この挑戦に成功すれば、核兵器国グループの結束を乱し、核保有主義の塊を崩すことになる。

日本は核攻撃による唯一の被爆国で、国民の多くは核禁条約を支持している。このことから日本政府が条約支持にまわるのは、時間の問題かもしれない。しかし、その実現のためには、広範でひたむきな運動、行動こそが必要となる。

明らかに、私たち米国市民には、世界で最も危険な国の政策やドクトリン、行動を変化させる道義的な責任がある。「核兵器なき世界」をもたらすとしたNPTの約束や、2010年NPT再検討会議で再確認された「核兵器の全面廃絶に対する核兵器国の『明確な約束』を含む核軍縮のための13項目合意を尊重し、実現しなくてはならない。

数日のうちに、米大統領選が終わるが、もしトランプ氏が、(231年前に奴隷制を擁護するために憲法に書き込まれた)非民主的な選挙人制度を通じて、あるいは選挙後のクーデターによって勝利するようなことがあれば、暗い見通しに直面することになるだろう。つまり、トランプ氏の専制が固められ、米国の先制攻撃能力を回復させようとしている国防総省の極度に危険なキャンペーンが強化されるのである。

選挙には限られた希望しかない。機能不全と詐欺、不遜、惨事に満ちたトランプ政権の4年が経過し、バイデン元副大統領が選挙を勝ちそうに見える。バイデン氏が核禁条約にすぐに署名することはないだろう。彼が勝利すれば、「核兵器なき世界」のために努力するとの公約に反して、核戦力の強化と、核戦争を戦い「勝利」するための米国の準備は続けられることになるだろう。

しかし、良い面を見るならば、バイデン政権の4年間は、被爆者が始めた長い取り組みの次のステップを考える時間と政治的空間、機会を与えることになるだろう。我々は、バイデン氏に核兵器の先制不使用政策を採るとした公約を順守するよう主張していく。ポストコロナ、ポストトランプ期において経済・社会の再活性化が緊急に求められる中、必然的に国家予算の優先順位を巡って「大砲(軍事支出)かバター(社会支出)」議論が交わされることになるだろう。これにより、イランとの核合意への復帰や、核廃絶まではいかなくとも再び軍備管理が進められる展望、さらには、米国の核戦力とその運搬手段の更新に費やされる支出を大幅に削減する道が開かれるだろう。

先週、クメント大使は、核禁条約は、1980年代と同じように核軍縮の緊急性に関する「社会的論議」に火をつけることになるとの見方を示した。マサチューセッツ州議会は、核禁条約に従うために州が採るべき措置に関する調査を進めることを決め、米国政府が多額の核兵器関連費用を削減しNPT第6条を履行するよう強く求めた。このように、絶対的な力を持つ国の一隅でも、社会的論議は始まっているのである。(10.25.2020) INPS Japan/ IDN-InDepth News

 

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