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Resist Erosion of NPT to Rid the World of Atomic Bombs

核兵器廃絶に向けて、NPT崩壊を食い止めよ(セルジオ・ドゥアルテ元国連軍縮問題担当上級代表、パグウォッシュ会議議長)

Photo: Sergio Duarte, then UN High Representative for Disarmament, opening the 6th Conference on Facilitating the Entry into Force of the Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty (CTBT), on 24 September 2009, in New York. Photo # 411972. Credit: UN Photo/Sophia Paris.【ニューヨークIDN=セルジオ・ドゥアルテ】

核不拡散条約(NPT)が発効してから来年の3月で50周年を迎えるが、その歴史と再検討サイクルから教訓を学ぶよい機会となることだろう。

この条約が50年存在した中で得られた経験を、国際社会のあらゆる当事者が真剣に受け止めねばならない。核軍縮の進展は、既存の軍縮・不拡散枠組みのさらなる崩壊を防ぐきわめて重要な要素だ。

国連総会決議2028(XX)を振り返るところから始めてみよう。1965年に全会一致で採択されたこの決議は、NPTに至る交渉の基礎となる原則を示したものだ。同決議によれば、交渉される条約は、(1)いかなる形においても、直接的であるか間接的であるかを問わず、核兵器の拡散を認めない。(2)核保有国と核非保有国との間の責任の受諾可能な均衡を保つこと、(3)全般的かつ完全な軍縮、とりわけ、核軍縮の達成に向けた一歩とすべきこと、といった原則が示されていた。

これらの原則が条約の文言にどのように反映されて、そしてどのように実効性を持ってきたかについては、今日に至るまで、さまざまな当事者が異なる見解を持っている。

NPTが発効して50年。振り返ればその履行を巡るいくつかの問題に関する加盟国間の意見の相違が、常に交渉の行方に影を落としてきた。このような状態がもたらした影響は、これまで9回開催された再検討会議のうち5回において、最終文書の実質的な勧告に関してコンセンサスが得られなかったという結果に表れている。ほとんどの場合において、そうした文書には共通の立場よりも意見の不一致が記録されている。

にもかかわらず、再検討会議の歴史は、軍縮の進展に関する実質的な合意は実際に可能であることを示している。2000年の再検討会議では、「13項目の実際的な措置」と、核兵器国による核軍縮達成への「明確な約束」に全会一致が見られた。2010年の再検討会議では、核兵器廃絶に向けた意味のある措置を含んだ「行動計画」の採択に成功し、1995年の中東に関する決議に従って、中東に非大量破壊兵器地帯を創設するための行動をおこすよう勧告したのである。

その方向での具体的な措置が実行に移される見通しこそが、1995年にNPTの無期限延長が合意された際のきわめて重要な要素であった。残念ながら、これらの合意を実際に履行する政治的意思は、実際には見られなかったといってよい。2010年再検討会議はまた、核爆発がもたらす「壊滅的な」帰結に関する、加盟国全会一致による懸念も記録している。

残念ながら、これまでの会議と同じように、今年の4月29日から5月10日まで開かれた第3回準備委員会は、ふたたび、来年4月27日から5月22日までニューヨークの国連本部で開催されるNPT再検討会議に対する実質的な勧告を採択することなく終了した。各加盟国の頑なな態度に加えて、加盟国間の新たな不信とあからさまな敵対が加わって、実質的な勧告を含んでいた議長修正案への支持は得られなかった。

議長であるマレーシアのサイード・ハスリン大使は、過去の準備委員会の例に倣って、自らの権限と責任において、「2019年準備委員会議長の考察」と題する明晰な報告書を配布した。加盟国が最低限合意できるであろう内容を簡潔に集約したと見られる内容である。

過去の再検討サイクルでは、準備委員会の議長が、議論の結果に関する自身の見解を配布するという策に打って出たこともあった。しかし、こうしたやり方は、そうした文書の内容と位置づけをめぐって激しい議論を時として引き起こし、準備会合における議論の性格と目的に関する明確な共通了解が存在しないことを思わせた。

議長の「考察」

議長の「考察」に含まれている点の多くには、間違いなく一般的な賛同が寄せられるだろう。とりわけ、NPTが核軍縮・不拡散の基盤であること、こうした考えは維持・強化されなくてはならないという加盟国の信念に言及した部分である。条約が戦略的な安定に寄与している点や、軍縮・不拡散・原子力の平和的利用の間のバランスが重要であることも強調された。

議長文書は、軍縮の柱の履行に関するさまざまな見解を架橋する必要性を認識している。これは実際、加盟国の圧倒的多数の見解でもある。準備委員会で実質的文書に合意できなかった以上、「考察」の建設的なアプローチが再検討会議での議論と検討を導くよう望むばかりである。

2019年の第3回準備委員会は、アルゼンチンのラファエル・マリアーノ・グロッシ大使を2020年(=第10回)再検討会議の議長に選出することを含め、手続き面での勧告には合意することができた。グロッシ大使は、すでにある課題に関して条約加盟国とただちに協議に入る意向を示した。

準備委員会は、再検討会議への議題提案と組織面の問題について勧告を採択した。こうして、有能な議長と事務局によって任務が遂行されたことで、2020年再検討会議の成功に向けた道が切り拓かれた。

過去の準備委員会の歴史を振り返ると、さまざまな加盟国間の根底にある大きな相違が、手続き的な問題をも時として引き起こすことがあった。たとえば、2004年の第3回準備委員会では2005年再検討会議の議題について合意することができなかったが、これが05年再検討会議失敗の一因となっている。

その際の主な対立点は、それ以前の再検討会議の最終文書についてどれをその年の再検討会議で考慮に入るべきかという点であった。2週間の不毛な議論の後、あまりにも明らかなことを議題への脚注に付け加えるという形で、事態は解決された。すなわち、各国代表には、再検討に関連すると思われるいかなる問題をも提起する権利がある、という内容であった。

同様に議題案に合意するのが困難な場面は2007年にもあった。しかし、その時は、短い議論の後に、2005年再検討会議の時と同様の解決策が見出された。それ以来、その後2回の再検討会議に向けた準備委員会サイクルでは、同じ罠にはまることを回避し、必要な手続き的勧告に関してタイムリーな合意を見た。この種の問題で、将来の準備委員会での作業が妨げられるべきではない。

しかし、実質的な内容については、かなりの数の加盟国の間で、50年経過しても核兵器国が具体的なNPT上の核軍縮措置を取ることを怠っているという不満がある。(核兵器国の軍縮義務を規定した)NPT第6条の履行という約束を果たしていないというこうした認識が、核兵器の廃絶を目指した核兵器禁止条約(=核禁条約)の交渉を提案し国連総会で採択(2017年)するという動きにつながった。

核禁条約推進派は条約の発効を積極的に促進し、しかる後にこの条約が実定国際法の仲間入りをすると期待している。一方、これまで核禁条約に反対してきた人々がより合理的な態度を示すとすれば、それは、NPTに盛り込まれた核不拡散の公約を強化するものとして、また同時に、核禁条約を嘲る人々が公言している核軍縮という目的を達成する道筋として、核禁条約の存在と意義を少なくとも認識する、というものになるだろう。

禁止条約はNPTと矛盾するものではない。核禁条約は、包括的核実験禁止条約(CTBT)や非核兵器地帯の設立と相まって、加盟国の不拡散へのコミットメントを強化するものだ。また、依然として禁止されていない、最後かつ最も恐るべき大量破壊兵器に対する国際社会の圧倒的多数の拒絶を強調するものでもある。こうした明白な現状を見るならば、核兵器禁止の提案が常に核保有国からの頑強な抵抗にあってきたことは、理解に苦しむ。

不安な兆候

主要な核保有国の間の二国間協定の構造が崩壊する危険な兆候が現れてきた。軍縮と不拡散に関する多国間フォーラムにおいては、20年以上も明確な成果が上がっていない。軍備管理の分野で合意された規範は、一方的な決定によって拒絶され、取って代わられている。化学兵器禁止条約の検証システムに対する信頼性が疑問に付されている。また、(未発効とはいえ)CTBTが設定した基準に対して、根拠のない疑いが向けられている。

主要な核兵器国は、さらなる軍備管理と軍縮につながるような共通了解をもとめて互いに交渉することに興味を失っているようだ。まもなくすると、世界最大の核兵器保有国(米国とロシア)間での核兵器の規模と配備に関する法的拘束力のある制約が存在しなくなってしまうと懸念されている。一部の核兵器国における競争と革新的な技術応用が軍事力に新たな能力を付与し、危険な軍拡競争が再来している。

中東非大量破壊兵器地帯の創設に関して進展が見られないことが、来る再検討会議で再び大きな障害となることだろう。2020年再検討会議で成果が得られる可能性は過去の会議にもまして低いというのが識者等の一致した見方である。

国連事務総長が招集した賢人会議による最近の報告書は、核軍縮をめぐる停滞は維持できるものではなく、核の秩序が崩壊することはどの国にとっても利益とはならない、と結論付けている。実際、報告書は「軍縮における対立が激しさを増し、異なる見解を持った諸国が主要な問題に関して互いに意味のある交渉を持つことが難しくなっている」と警告している。

NPTの目的の達成を進展させるのではなくむしろ先送りにしてしまいかねない最近の提案や立場に対して出されている懸念は、理解しうるものだ。第3回準備委員会では、数十年にわたって促進されてきた「ステップ・バイ・ステップ」アプローチの主唱者ですら、このやり方では結果を残せないと考え始めていることが明らかになった。

現時点では、核軍縮に向けた好ましい環境を創出するために一部の国々による多国間協議を行うという提案が、いかにして進展をもたらしうるのかについて見通すことは難しい。彼らの感覚では、好ましくない状況は、NPTを含めた軍縮・不拡散分野の既存の枠組みの概念や協議、採択の妨げにはならなかった。

NPT加盟国は、過去の教訓に注意を払うだけではなく、現在の兆候にも気を配らねばならない。グローバルな集団的平和・安全保障枠組みがさらに悪化し、ひいては、NPTの信頼性と安定性にも影響を与えるような、明白かつ火急の危険が存在する。すべてのNPT加盟国が義務を果たすことが、この点で肝要である。

第3回準備委員会の議長がその「考察」において、さまざまな国々の間において、対立点よりも一致点の方が多く存在すると指摘していることがここでは重要だ。これらを架橋することがいかに困難であっても、加盟国は、オープンかつ包摂的、透明性を確保した対話を求める議長の勧告を心にとめ、2020年再検討会議とそれ以降には、そうした精神でもって会議に臨まねばならない。

NPTのすべての加盟国が、2回連続で再検討会議を失敗に終わらせてはいけないと強く望んでおり、軍縮・不拡散分野での国際合意構造の信用と信頼を損じるようなマイナスの結果を避けるために誠実に協力しなくてはならない。それ以外の道は、受け容れることができない。(6.17.2019) INPS Japan/ IDN-InDepth News

※セルジオ・ドゥアルテ大使は、「科学と世界問題に関するパグウォッシュ会議」の議長で、元国連軍縮問題上級代表。2005年核不拡散条約再検討会議の議長を務めた。