Reporting the underreported threat of nuclear weapens and efforts by those striving for a nuclear free world.

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Australia’s ‘Quit Nukes’ Campaign Targets Superannuation Funds

オーストラリアの「核をやめろ」運動、年金基金を標的に

Photo (L-R): Quit Nukes Director Margaret Peril, Australian Ethical Acting CEO Steve Gibbs, ICAN Australia Director Gem Romuld. Source: Quit Nukes.【シドニーIDN=ニーナ・バンダリ】

年金基金に対して投資先から核兵器製造企業を外すように要請する運動がオーストラリアで始まった。これは国連の核兵器禁止(核禁)条約の精神に沿ったものである。同条約は、50カ国目が批准してから90日で発効することになっているが、現在、批准を終えているのは33カ国で、あと17カ国が批准することで国際法として効力を持つようになる。

戦争防止医師会議(MAPW)と核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の共同イニシアチブである「核をやめろ」キャンペーンは、オーストラリアのプロジェクトで、核兵器に対する投資の実態を記録する年次報告書『核兵器に投資するな』を発行している団体「パックス」と共同で実施している。

「核をやめろ」のマーガレット・ペリル代表は、「このキャンペーンは、投資額2兆ドル超と、世界最大規模の年金基金の1つになっているオーストラリアの年金産業を標的にしたものです。」と語った。

世界規模の市場調査会社「イプソス」が今年8月に行った世論調査によると、オーストラリア国民の実に69%が、年金基金は核兵器の生産や配備を支援する企業に投資するべきではないと考えていることがわかった。しかし、「パックス」の評価によれば、約190の年金基金のうち、非核兵器の方針を貫いているのは「オーストラリアン・エシカル」と「フューチャー・スーパー」の2基金だけであった。

「フューチャー・スーパー」は、核エネルギーやウラン採掘、核兵器や核関連の産業から利益を得る企業に投資しないと公約している。その創設者であるサイモン・シェイク氏はIDNの取材に対して、「私たちは、壊滅的な核爆発による放射性降下物も含めて、社会や環境に対するリスクを抑えるための長期的な視点で考えています。自分のお金がどう投資されるのか、自分たちと次世代にとってどのような将来を作るのかということに関して、全てのオーストラリア人に選択肢が与えられるべきです。」と語った。

キャンペーンでは、核兵器のリスクについて年金基金に情報を提供し、核兵器から脱却した投資を促すとともに、核兵器生産に関連した企業をポートフォリオから外した投資を行うよう求めている。

核兵器への投資を拒絶していることで有名な「オーストラリアン・エシカル」の倫理研究部門長であるサイード・スチュアート・パルマー氏は、「核戦争は、地球上の生命の存在そのものを脅かす危険性を孕んでおり、核技術や核物質を核兵器製造のために悪用する危険は、私たちが原子力発電所に対しても投資しない理由の一つになっています。」と語った。

「核をやめろ」キャンペーンは、次の18企業を投資先から排除することを訴えている。

イーコム(米)、アエロジェット・ロケットダイン(米)、エアバス(オランダ)、BAEシステムズ(英)、ベクテル(米)、ボーイング(米)、BWXテクノロジーズ(米)、フルオール(米)、ジェネラル・ダイナミックス(米)、ハニウェル・インターナショナル(米)、ハンチントン・インガルス・インダストリーズ(米)、ヤコブズ・エンジニアリング(米)、ラーセン&トゥブロ(インド)、ロッキード・マーチン(米)、ノースロップ・グラマン(米)、サフラン(仏)、セルコ(英)、サルズ(仏)

ICAN豪州支部のジェム・ロムルド代表はIDNの取材に対して、「世界の圧倒的多数の人々が核兵器の廃絶を望んでおり、彼らの銀行口座やスーパーファンドをこの目的促進のために使えることを認識しています。」「毎年1000億ドルが核兵器産業に投資されているのだから、核兵器製造企業に対する資金を減らし、彼らに社会的認知を与えないことは、核禁条約を適用する強力な方法となります。」と語った。

国際的にみれば、金融機関は、核禁条約に参加していない国における核兵器製造企業を排除している。同条約は、ひとたび発効すれば、化学兵器や生物兵器、地雷、クラスター弾に関する条約がそうであったように、核兵器を違法化することになる。

「核禁条約はまた、金融も含め、核兵器生産の支援も禁じています。オランダの主要な年金基金『ABP』や、ノルウェーのソブリン・ファンドなどのいくつかの金融機関が核兵器製造企業から投資を引き上げる基礎と動機を同条約はすでに与えています。」とロムルド代表は付け加えた。

核兵器への投資はまた、国連が支持する「責任ある投資の原則」(UNPRI)にも反している。UNPRIの署名者になった投資家やアドバイザーに対しては「彼らは当然に国連の持続可能な開発目標(SDGs)に従うという期待があります。」SDGの第16目標は、とりわけ平和な社会について掲げています。従って、核兵器への投資はSDG第16目標に反することになるのです。」と、ペリル氏はIDNの取材に対して語った。

2018年11月に「イプソス」が行った調査によると、オーストラリア国民の実に79%が核兵器禁止条約の署名・批准を望んでいることは注目に値する。オーストラリアは核兵器を保有していないが、米国との同盟の下で拡大核抑止に依存しており、これが同国の国家安全保障にとって鍵を握ると考えられている。

オーストラリア国立大学戦略・防衛研究センターのシュテファン・フリューリンク博士はIDNの取材に対して、「オーストラリアはインド・太平洋地域の安全保障秩序に米国の核兵器がもたらす安定化作用に価値を見出しています。米国の拡大抑止の合法性を認めず、ついては米国との同盟を非合法化することで、国際の安全の主要な柱を損なうような核禁条約に署名すべきではありません。」と語った。

「米国の他の同盟の場合とは異なり、米豪同盟において米国の核兵器はさほど大きな役割をもってこなかった。オーストラリアが米国のアジアにおける抑止力を支えるために政治面とともに戦略面で何ができるかという問題が、過去にもまして将来的に重要になってくるであろう。」

つまり、オーストラリアは、アジアの戦略的秩序における安定化要素だという理由で、米国の拡大核抑止に重要性を見出しているということになるのだろうか。「パシフィック・フォーラム」(本拠ホノルル)の副代表で核政策研究部門の責任者を務めるデイビッド・サントロ氏はIDNの取材に対して、「オーストラリアは、米国の拡大核抑止に対する貢献拡大も含めて、インド太平洋地域における抑止力と防衛力を強化する必要があると認識しています。中国の再勃興に見られるような、この地域の安全保障環境が急速に変化するなかで、そうした取り組みは安定化要因になると見ているのです。しかし、オーストラリアは、抑止や防衛の面でより大きな負担を負うことに伴うリスクもよく理解しています。こうした問題に関して、とりわけ核兵器の側面に関するアンザス条約(オーストラリア、ニュージーランド、米国による安全保障条約)内部での対話が必要です。」と語った。

前出のフリューリンク氏、サントロ氏に加え、アンドリュー・オニール教授は、11月15日にシドニー大学米国研究センターが発表した報告書「協力の強化:核抑止と米豪同盟」において、米国の拡大核抑止に対するオーストラリアの関心は「主に『見捨てられ』の懸念よりも『巻き込まれ』に関するもの」であり、「米豪同盟は、抑止力を核兵器に依存する程度を低下させるために、まずは通常兵器による長距離打撃能力の面での協力を検討し、万一オーストラリアの安全保障環境が悪化する場合は、極限の状態に限り核兵器を含む協力の拡大をはかる可能性があるというシグナルを送ることが必要だ」と論じている。

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、2019年初めの時点で、9カ国(米国・ロシア・英国・フランス・中国・インド・パキスタン・イスラエル・北朝鮮)が合計で約1万3865発の核兵器を保有している。うち、3750発が作戦使用可能な状態にあり、約2000発が高度な警戒態勢下に置かれている。(11.22.2019) INPS Japan/ IDN-InDepth News