Reporting the underreported threat of nuclear weapens and efforts by those striving for a nuclear free world.

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The G20 Should Have Nuclear Disarmament on Their Agenda

G20は核軍縮を議題とすべきだ(ハーバート・ウルフ ボン国際軍民転換センター元所長)

Photo: G20 leaders pose for a group photo at the start of the G20 Osaka Summit, 28 June 2019. Source: Japan’s Public Relations Office.【ドゥイスブルク(ドイツ)IDN=ハーバート・ウルフ】

現在、気候変動と核戦争の可能性という2つの重要な動きが、文字通り、人類の生存そのものを脅かしている。多くの政府が確認しているにも関わらず解決策が立つ見通しはないが、気候変動の深刻さに関しては幅広いコンセンサスがある。環境に悪影響を与える政策に対して無数のデモが行われるなど、気候変動をめぐる議論は、少なくとも活発であるといえる。

これに対して、核災害のリスクについて、人々の意識からほとんど消え去ってしまった。平和運動と冷戦の終結によって少なくとも一時的には政策の大きな転換につながったが、今日では、前例のない規模の再武装化が始まっている。核弾頭の数は、冷戦終結時の7万発超から現在の1万4000発へと減ってきたが、世界を数度絶滅させるのに十分な量が残っている。

しかし、とりわけ、米国や中国、ロシアの核兵器近代化や、イスラエル・北朝鮮・インド・パキスタンのような国々の核戦力拡張は、武力紛争のリスクと核兵器使用の可能性を増してきた。

こうして、軍事支出は急拡大している。現在、年間で1.8兆米ドルを超すが、冷戦終結時に比べると既に5割増である。北大西洋条約機構(NATO)がさらなる予算増を要求し、中国が世界の国々にペースを合わせ、ロシアが近隣諸国に対して攻撃的な姿勢を示し、インドが中国に反応し、サウジアラビアとイランが中東で軍拡競争を演じている現状にあっては、これが私たちをいったいどんな状況に導くのかと心配するのは自然なことだろう。

気候変動と軍備政策との関連は、近年の戦争と暴力的な紛争、それらが引き起こす難民・移民の動き、そしてそれが生み出す反発に現れている。気候変動と軍備拡張のリスクはよく知られているが、この流れが反転する兆しはない。崖から飛び降りるレミングスのように、この2つの危機は、不可避と思われる惨事に向かって突き進んでいる。

部分的に機能していた多国間主義と、「ギブ・アンド・テイク」の精神による妥協で成り立っていた旧来の世界秩序は、国家主義的な野望と、飽くなき自己利益の追求に取って代わられた。こうした中で、気候に関する諸合意が疑問に付されるのみならず廃棄され、軍備管理に関する交渉の場やそれに伴う条約も失われつつある。

1980年代から90年代にかけて超大国の米ソ間で結ばれた軍備管理協定が時代錯誤的なのは間違いない。今日、制度的な敵対はもはや問題ではなく、野放図な軍拡競争が人類全体の脅威となっている。だからこそ、破局に向かう流れを逆転させるには、中国やインド、サウジアラビアといった地域大国を軍縮努力に加えなければならない。

今や、G20サミットがこうした目標を達成するための「自然な」フォーラムといえよう。G20のうち19カ国とEU諸国を合わせると、世界の軍事支出の82%にも及ぶ。G20は全ての軍事輸出のほとんどを占め、それらの国々の戦力には世界の核弾頭の98%が収められている。再軍備や軍拡競争すら行われている欧州や東南アジア、中東の地政学的な利益については、G20の議題となるだろう。

この排他的なクラブの加盟国はまた、地球温暖化に責任がある国々でもある。気候変動を否定する勢力もこのグループに見いだせる。米国、カナダ、ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、ドイツ、フランス、英国、イタリア、ロシア、トルコ、南アフリカ、サウジアラビア、インド、中国、日本、インドネシア、韓国、オーストラリアの19カ国は、現在の破壊的な傾向に対して主要な責任を負っている。

だとするならば、定期的に開催されているG20サミットはなぜ軍縮や軍備管理の問題に対処しようとしないのだろうか。崖から飛び降りようとするレミングスをいかに説得して立ち止り、向きを反転させることができるだろうか。原則的には3つの可能性がある。すなわち、①理性に訴える科学的なリスク分析か、②世論から圧力をかけ自分たちの本来的な価値を守るよう主張するか、それとも、③たとえ反対に遭ったとしても人権と国際法を尊重するか、である。

気候変動危機への対応として、科学的な分析と民衆からの圧力という2つの手段が現在用いられている。科学研究の大多数が、流れを逆転させるには何をどうすればいいのかを明らかにしてきた。しかし、(すべてとは言えないまでも)多くの政府が、「未来のための金曜日」運動が勢いを増し、科学的な警告と民衆の抗議活動がもはや無視しえない規模の運動へと拡大するに至ってから、ようやく真剣に取り組み始めたところである。

一方、現在の軍備拡張政策に対して大きな抗議行動が行われていないことは、軍縮や軍備管理に関する協議が開かれない理由のひとつかもしれない。暴力的紛争の原因やリスク、武器輸出がもたらす破壊的な副作用、核戦争がもたらす当面の危険については、数多くの研究で調査・記録されているが、1990年代に見られたような軍備管理に向けた動きはどこにも見られない。戦争のリスクに関する科学的な研究や、軍備拡張を続けることへの政治的・経済的警告、そして、ごく単純に言えば、平和運動に対する目立った支持がいずれも欠如しているのだ。

G20が、こうした抗議活動のターゲットとされるべきだ。もし事態を好転させようと思うなら、今日の危機を引き起こした当事国が2020年11月にサウジアラビアで開かれる次のG20サミットに集う際に、声高な抗議行動の要求を彼らに認識させるようにすべきだ。「G20を非武装化せよ!」という呼びかけが、気候変動危機と軍備危機を引き起こしている主要な当事国を揺さぶることになるかもしれない。

分断された社会にあっても、先ほど述べたような価値を称揚することが必要だ。欧州諸国はトルコやサウジアラビアのような国々に武器を売り続ける一方、中国などでの人権侵害には口をつぐんでいる。G20側には前向きな考えをもった決意は見られない。

一部の防衛産業や石油企業、自動車製造企業の事業を危機に晒すことを恐れて、口先だけで欧州的な価値観を唱えるだけでは、人類の生存そのものに脅威を与えている惨事を防ぐには不十分だろう。(01.10.2020) INPS Japan/ IDN-InDepth News

※ハーバート・ウルフは、ボン国際軍民転換センター(BICC)の所長を1994年の創設から2004年まで務めた。現在は、BICC上級研究員。