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Support for ‘Obama Nuclear Doctrine’ by Executive Order – Japanese

大統領令による「オバマ核ドクトリン」の実施に支持を

 【ベルリン/ニューヨークIDN=ラメシュ・ジャウラ】

バラク・オバマ大統領が、共和党の議会の重鎮や上院外交委員会及び軍事委員会の委員長からの反対を受けながらも、自身がこだわっている核政策の少なくとも一部を任期終了前の数か月間に大統領令を通じて実行しようとしていると報じられている計画に対して、幅広い支持が集まっている。

オバマ大統領が検討しているいずれのオプションも、議会の正式承認を必要としない。「事実、これらすべてのオプションに関する決定権は米軍最高司令官としての彼の行政権限の範囲内にあります。」と、米国に拠点を置く「核時代平和財団」のデイビッド・クリーガー会長は語った。

クリーガー氏は、IDNが『ワシントン・ポスト』紙の7月10日付報道をうけて意見を求めた核軍縮専門家のひとりである。その報道とは、米核戦略の「先制不使用」政策の宣言や、包括的核実験禁止条約(CTBT)が目指す核兵器実験の禁止を確認する国連安保理決議の追求などをオバマ大統領が大統領令によって検討している、というものであった。

オバマ大統領はまた、▽新戦略兵器削減条約(新START)によって配備済戦略核弾頭にかけられた制限を5年間延長するようロシアに提案、▽「長距離スタンドオフ兵器」と呼ばれている新型核巡航ミサイル開発の遅延、▽米議会予算局が今後10年で3500億ドルかかると予測する米核戦力の近代化に向けた長期計画の見直し、も検討しているという。

オバマ大統領がそうした計画を検討しているという事実は、ベン・ローズ大統領副補佐官(安全保障担当)が6月6日に「軍備管理協会」に対して明らかにしたものである。ローズ副補佐官は、オバマ大統領は「核兵器の安全保障戦略上の役割を低減し、意図しない核使用のリスクを低減するために取れるさらなる措置があるかどうかを検討し続けることになるだろう。」と述べている。

そうした措置は、2009年4月にオバマ大統領がプラハ演説で提示した核政策アジェンダの重要な要素の実現につながるだけではない、と核軍縮専門家はいう。カザフスタンの主導で2015年12月に国連総会が採択した「核兵器なき世界の達成に関する普遍的宣言」を前進させるものともなる。

オバマ大統領の計画についてIDNが意見を求めた専門家の中には、軍備管理協会(米ワシントン)のダリル・G・キンボール会長核戦争防止国際医師会議ドイツ支部のザンテ・ホール共同代表核不拡散・軍縮議員連盟(PNND)のグローバル・コーディネーターであるアラン・ウェア氏が含まれる。

オバマ大統領は核実験の世界的禁止を発効させることを強く支持しているため、IDNは、包括的核実験禁止条約機構(CTBTO、ウィーン)のラッシーナ・ゼルボ博士の意見もあわせて求めた。

ゼルボ博士はインタビューの中で、オバマ大統領とオバマ政権がCTBTとCTBTOに強い支持を示していることを歓迎するとともに、「オバマ大統領の取組みに感謝しています。」と語った。また、「ローズ・ゴットモーラー米国務次官(軍備管理・国際安全保障)など米国高官も、米国は『核実験禁止の国際規範を確認する手段』を検討していると言明しています。」と語った。

「未完の仕事」を終わらせる必要

「核実験禁止に対する米国のコミットメントだけではなく、国際社会のコミットメントを再確認するような措置は正しい方向への一歩ですし、国連安保理決議は明確に強力なシグナルを送ることになるでしょう。」とゼルボ博士は明言した。

「とは言っても、これがために、「真に未完の仕事(=機能してはいるが20年経過しても未発効のままになっているCTBTという条約があるという事実)」から目が逸らされるようなことがあってはなりません。」ともゼルボ氏は指摘した。

「国連安保理決議は、意義あるものかもしれません。しかし、本当に意味を持つのは、残りの8か国(=CTBTの発効要件国のうち未批准国)がCTBTに批准することなのです。とゼルボ氏は強調した。

ゼルボ氏の懸念は理解できるものだ。軍備管理協会のキンボール会長が指摘しているように、「(CTBTが発効しない限り)米国が将来的に核実験を行う可能性は残されている。というのも、1999年に米上院がきわめて超党派的かつ拙速な形でCTBT批准を否決し、その後16年にわたって批准を再検討してきていないからだ。」

キンボール会長は、「米国が(CTBT批准へと)動かないことが、CTBT発効のために批准が必要とされる他の7カ国(中国、エジプト、インド、イラン、イスラエル、北朝鮮、パキスタン)の指導者に、批准を遅らせる言い訳を与えることになっています。」と語った。

しかし、核実験とCTBTに焦点を当てた国連安保理決議が、とりわけ、同様の総会決議とあわせて追求されることになれば、恐らくは一国(北朝鮮)を除いた全ての核保有国と、すべての非核兵器国の利益になるだろう、とキンボール氏は見ている。

キンボール氏は、「このイニシアチブは、条約の文言および精神と完全に合致しています。IMSやIDCの維持と効果的な運用など、CTBTOへの支持を徐々に掘り崩す可能性を高める『条約の制度疲労』の危険性を減じることにもなります。」とワシントンDCで開催されたイベントで語った。

IMSとは、待望のCTBTOによる「国際監視制度」のことで、完成すれば、世界中に張り巡らされた337施設から核爆発の兆候を監視できるようになる。現時点でも、既に約9割の施設が稼働中である。

IDCは、ウィーンのCTBTO本部にある「国際データセンター」のことで、世界の監視局から大容量のデータを受信している。処理されたデータは、原データ、或いは分析した形で、CTBTOの各加盟国に送られている。

次期大統領を拘束はしないが……

IDNは、オバマ氏が検討し、またそうするように要請されている大統領令は、次期大統領を拘束するのかどうかを尋ねた。

核時代平和財団のクリーガー氏は、「残念ながら、次期大統領を拘束しません。世論が次の大統領に圧力をかけてそうした政策を維持させるようにするには、オバマ大統領が米国民に対して政策変更の必要性を強く主張しなくてはならないでしょう。実際、一部の政策に対しては、訴訟が起こされるかもしれません。」と指摘したうえで、「しかし、オバマ大統領が任期の最後の数か月で大統領令によって米国の核政策に大きな変更を加えることを検討しているというのは、素晴らしいことです。」と語った。

クリーガー氏はまた、「核時代平和財団では、オバマ大統領に対して、次のような変更を米国の核政策に加えるように強く要請しています。▽先制不使用政策の宣言、▽警告即発射態勢の解除、▽米核戦力の警戒態勢の解除、▽外国領土からの米核兵器の撤去、▽地上からの核兵器の撤去、▽米核戦力近代化予算の完全削除、▽完全核軍縮に向けた誠実な交渉を開始するために9核兵器国を招集。もしオバマ大統領がこれらの大胆な策を採るならば、人類すべての利益になる真のリーダーシップを発揮し、彼自身が生きている間に核兵器ゼロに向かう道筋をつけたということになるでしょう。」と付け加えた。

IPPNWドイツのザンテ・ホール氏は、「もし将来の米国大統領にほんのわずかでも良心があるというのなら、そうした政策の変化を歓迎すべきでしょう。ただ、ドナルド・トランプ氏に関して言えば、就任してからどのような行動にでるかは予断を許しません。しかし、予測のつかない共和党大統領は過去にもいましたが、核軍縮を成功に導いた前例はあります。」と語った。

「核兵器ドクトリンの変更については、(共和党大統領よりも)民主党大統領の方がはるかに困難に直面するでしょうが、オバマ大統領は挑戦してみるべきです。先制不使用政策も警戒態勢解除も、抑止思考からの大転換であり、(実現すれば)世界は今より遥かに安全な場所になるでしょう。」

またホール氏は、「ヒラリー・クリントン氏については、女性として軍事面できちんと決断を下せる能力があることを証明しなくてはならない、という別の問題があります。これがなぜ問題になるのかについては私は答えることができませんが、現実に問題視されているのは事実です。」と指摘した。

しかし、民主党の大統領が前任の同じ党の大統領の決定を覆すというのは、聞いたことがない。「従って、もしオバマ大統領がこれらの変更を行った場合、ヒラリー・クリントン氏が次期大統領になったとしたら、これを覆すことはなさそうです。ただし、クリントン氏は自身の強さを見せつけるために、事前に一悶着起こすことになるかもしれません。」とホール氏は語った。

「大統領令では、米国で現在進行中の大がかりな核兵器近代化政策は直接的な影響を受けない。クリントン氏は、全体として見れば、多数の契約が絡み、巨大なロビー活動が関与する核兵器政策をキャンセルするよりも、ドクトリン上の変更を加える方が容易だと考えている。」いうのがホール氏の見方だ。

「しかし、もし単独で行えば、そうした変更はロシアに対する信頼醸成措置として機能するかもしれません。なぜなら、それは脅威レベルを大幅に低減することになるからです。もっとも、それが米国単独で実行されれば、米国内の多くの政治家は、米国をより危険にさらすものと感じてしまうかもしれません。」

「現段階では、ウラジミール・プーチン大統領がロシアにおいて米国と同様に先制不使用と警戒態勢解除の政策を実施することはなさそうだが、そうした考えをプーチン大統領に提示することはやってみる価値があることだと思います。」とホール氏は語った。

根本的な変化

PNNDフランスのコーディネーターであるジャン=マリー・コリン氏は、大統領令による先制不使用政策について、「もし採用されれば、政策の根本的な変化であり、核兵器なき世界に向けた記念碑的な一歩になるでしょう。停滞しているロシアとの核削減交渉の再開や、インド・パキスタンと並んで、とりわけP5(中国、フランス、ロシア、英国、米国)の間での多国間交渉の開始が導かれるかもしれません。」と語った。

P5とは、国連安全保障理事会5常任理事国であり、同理事会には他に任期2年で毎年半数が改選される10の非常任理事国がある。

「核ドクトリンに核兵器の先制使用政策が含まれているかぎり、多国間の核軍縮措置が実現する可能性は低いと言わざるを得ません。」とPNNDグローバル・コーディネーターのアラン・ウェア氏は語った。

ウェア氏はさらに、「そうした核ドクトリンは、通常兵器・化学兵器・生物兵器を含めた様々な脅威に対して核兵器が必要だと見なし続けることを意味します。しかし、もし核兵器の目的が、仮想敵国からの核攻撃のみに対する抑止を提供するものに変更されるならば、それが検証可能である限り、核軍縮は可能になるのです。」と語った。

「より単純にいえば、核兵器が、効果的かどうかは別として、あらゆる種類の悪を抑止することを目指すものならば、世界のその悪(=核兵器)が存在しつづける限り、私たちは核兵器にこだわり続けることになるでしょう。しかし、もし、核兵器が他の核兵器の抑止のためだけに存在するのならば、核兵器をまとめてなくすために協力し、核兵器を維持しつづける理由を一緒に取り払うことが可能になるのです。」と語った。

オバマ大統領は2010年の「核政策見直し」で、核兵器の「単一目的」配備を実現すると約束した経緯がある。これは、核兵器の存在する唯一の目的は、他の核兵器の抑止にあるとするものである。「これは、先制不使用政策ときわめて近いものです。インドと中国はすでに先制不使用政策を採用していますが、他の核武装国に対して同様の政策を採ろうとの動機を与えるには到っていません。」とウェア氏は語った。

ウェア氏もコリン氏も、もし米国が先制不使用政策を採るならば、米国の誠意をロシアに示す意義あるシグナルになり、ロシア自身が1993年までは維持していた先制不使用政策を再導入する動機になるかもしれない、と考えている。

「加えて、英国とフランスも、核兵器使用の壊滅的な影響に焦点を当てる『人道イニシアチブ』に対応するよう議会からの圧力を受けている。先制不使用政策の採用は、この対応の一環として両国が採れる信頼醸成措置となる。しかし、両国が単独でそうすることはないだろう」とコリン氏は指摘した。

オバマ大統領への賛意を示しているのは、PNNDの共同代表であるエドワード・J・マーキー米上院議員である。彼を含めた10人の上院議員が7月20日にオバマ大統領に書簡を送り、警告即発射態勢を解除し、「先制不使用」政策を採択し、過剰な核兵器近代化計画を縮小するよう求めている。

オバマ大統領は、広島・長崎に米国が原爆を投下してから71年後に現職米大統領として初めて広島を5月27日に訪問した際に、核保有国に対して「恐怖の論理から逃れ、核兵器なき世界を追求する勇気を持つよう」訴えた、と上院議員らは指摘した。

また、軍備管理協会のキンボール会長も、先制不使用政策を強力に支持している。彼は、6月30日に同協会のウェブサイトに寄せた記事で、「一つの極めて重要なステップは、オバマ大統領が、米国は核兵器を最初に使用することはないと宣言することだ。そうした決定は、冷戦期の危険な思考を緩め、米国と世界の安全保障を格段に高めることになるだろう。」と記している。

キンボール氏はさらに、「先制不使用政策を採用することで、米国は、他の核保有国、とりわけアジアの核保有国の核ドクトリンによい影響を及ぼすことができるかもしれません。米国の宣言的政策がそのように変わることで、米国が中国やロシアの戦略的戦力に対して核攻撃を先制的に仕掛けた後に、両国の報復戦力を無効化する目的で米国のミサイル防衛網を利用するかもしれないという両国の懸念を緩和することにもつながるだろう。」と語った。

キンボール氏も、オバマ大統領が広島で5月27日に述べた言葉に言及している。その言葉とは、「私の国のように核を保有する国々は、勇気を持って恐怖の論理から逃れ、核兵器なき世界を追求しなければなりません。」というものだ。「そう、私たちはそうしなければなりません。」とキンボール氏は付け加えた。

「そうしなければならない」理由は、米国の先制不使用政策が核の大惨事のリスクを低減し、ロシアによる更なる核削減の見通しを明るくし、中国を核リスクを低減させるプロセスに引きずり込むことができるからだ。

さらにキンボール氏は、「核兵器使用のリスクが最も高いパキスタンや北朝鮮の危険な核ドクトリンにスポットライトを当て、両国に先制不使用政策を再検討するよう迫る効果もあります。」と語った。

「核兵器の先制使用を認めない新たな規範を形成することで、オバマ大統領は、私たちの世代においても、来たる世代においても、核兵器が二度と使用されずに済むようにできるかもしれません。」とキンボール会長は語った。 (07.22016) INPS Japan/ IDN-InDepthNews

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